良いWeb制作は、よく見ることから。利用者の声とサービスの強みを活かす改善の進め方
ホームページからの問い合わせを増やしたい」
「Webアプリを作ったけれど、思ったほど使ってもらえない」
「改善したい箇所が多く、どこから手をつければよいか分からない」
Webサイトやアプリを運営していると、こうした悩みに出会います。
うまくいかない状況が続くと、画面の欠点や利用者の行動ばかりが気になってしまうこともあるでしょう。しかし、改善の出発点になるのは、目の前の状況を落ち着いて観察することです。
何が起きているのか。利用者は何を求めているのか。そして、すでにうまく機能している部分はどこなのか。
曇りのない鏡と静かな水を表す「明鏡止水」という言葉は、Web制作の姿勢にも通じます。
この記事では、先入観をいったん脇に置き、利用者の困りごととサービスの強みを確かめながら改善する方法をご紹介します。
※記事中の場面は、改善の考え方を説明するための例です。特定の案件での成果を示すものではありません。
目次
- 改善の第一歩は「事実」と「解釈」を分けること
- ヒアリングでは、要望の背景にある目的を確かめる
- 今ある強みを見つけ、伝わる形に整える
- 利用者の行動から、つまずく場所を見つける
- 小さく改善し、運用しながら育てていく
1. 改善の第一歩は「事実」と「解釈」を分けること
問い合わせが少ないと、「デザインが古いからだ」と感じるかもしれません。操作について質問が続くと、「説明を読んでもらえていない」と考えることもあります。
ただし、どちらも原因として確かめられたわけではありません。
問い合わせが少ない背景には、訪問者自体が少ない、サービスの対象者が伝わっていない、料金の目安がなく相談をためらう、フォームで入力を中断しているなど、複数の可能性があります。
原因によって、必要な対応は変わります。最初からデザインだけの問題と決めると、見た目を整えても困りごとが残るかもしれません。
「起きたこと・考えた理由・確認方法」を書き出す
まずは、次の三つに分けて整理してみましょう。
| 起きたこと | 考えられる理由 | 確認する方法 |
|---|---|---|
| 問い合わせが少ない | 相談できる内容が分かりにくい | 初めて見る人にサービス内容を説明してもらう |
| 申し込みの質問が多い | 次に押すボタンを見つけにくい | 実際の申し込み操作を見せてもらう |
| 入力が途中で止まる | 入力項目が多い、エラーから戻れない | 入力画面とエラー時の動きを確認する |
この整理だけで原因が確定するわけではありません。しかし、漠然とした不満を、確かめられる問いに変えられます。
数字にも、読み取りの前提がある
アクセス解析を見る場合も、数字だけで判断しないことが大切です。
たとえば、フォームの送信件数を比較するなら、訪問数や集計期間も合わせて確認します。閲覧する人が増えたのか、申し込みやすくなったのかでは、意味が違うからです。
計測が正しく動いているかも確認が必要です。送信ボタンのクリックと送信完了は、同じ出来事ではありません。
見たことと、そうだろうと思ったことを分ける。 それが、無駄な改修を減らすための土台になります。
まとめの一言:原因を決める前に、起きている事実と、まだ確かめていない仮説を分けましょう。
2. ヒアリングでは、要望の背景にある目的を確かめる
Web制作のご相談では、「予約機能がほしい」「トップページを華やかにしたい」といった、具体的なご要望が出てきます。
その内容は、制作を進めるうえで大切な入口です。さらに、なぜその機能や変更が必要なのかを共有できると、提案の精度が上がります。
たとえば、予約機能がほしい理由が、営業時間外の問い合わせへの対応なら、受付フォームで足りる場合があります。一方、空き枠をその場で確定したいなら、予約枠の管理や重複予約を防ぐ仕組みが必要です。
同じ「予約機能」でも、解決したいことによって作るものは変わります。
最初に共有したい四つのこと
制作会社や開発者との打ち合わせでは、次の内容を用意しておくと、話を具体的に進めやすくなります。
- 誰が使うか
初めてのお客様、継続利用者、社内担当者など、主な利用者を整理します。 - どんな場面で使うか
通勤中にスマートフォンで探すのか、仕事中にパソコンで入力するのかなど、利用場面を考えます。 - 今、何に困っているか
抽象的な不満に加えて、実際にあった問い合わせや作業の流れを共有します。 - どうなれば改善と言えるか
入力漏れを減らす、日程調整の往復を減らすなど、目指す変化を言葉にします。
最初からきれいな資料を作る必要はありません。普段使っている表や、困ったときのメモが手がかりになります。
意見が分かれたら、共通の目的に戻る
事業者はサービスの魅力を詳しく伝えたい。制作側は情報を整理したい。現場の担当者は更新の負担を減らしたい。それぞれに理由があります。
そんなときは、「初めて訪れた人が、安心して相談できること」など、共通の目的に立ち返ります。
その目的から考えると、詳しい説明は別ページにまとめる、よくある質問は現場で更新しやすくする、といった選択肢が見えてきます。
お互いの要望を並べるだけでなく、その背景を確かめる。丁寧な対話は、実装後の使い方まで見据える助けになります。
まとめの一言:作りたい機能と一緒に、誰の何を楽にしたいのかを共有すると、必要な形が見えてきます。
3. 今ある強みを見つけ、伝わる形に整える
リニューアルというと、現在のサイトの欠点を探すところから始めがちです。
しかし、既存のお客様が選んでいる理由や、使いやすいと感じている部分まで消してしまっては、もったいないですよね。
改善では、変える部分と同じくらい、残す価値のある部分を見つけることが大切です。
音楽でも、音程を整えることに集中しすぎて、その人らしい歌い回しまで失われてしまっては魅力が薄れます。Web制作でも、整えるべきところと、そのサービスらしさを支えるところを見分けたいものです。
強みは、日常のやり取りの中にある
強みを探すときは、次のような材料を振り返ってみてください。
- お客様から繰り返し感謝されること
- 申し込み前によく質問されること
- 継続して利用されているサービス
- 担当者が自然に行っている気配り
- 既存のサイトで分かりやすいと言われた箇所
たとえば、丁寧な相談対応が選ばれる理由なら、サイトでも「相談の進め方」を具体的に紹介できます。
相談前に必要な準備、打ち合わせで確認する内容、提案までの流れが分かれば、利用者は依頼後をイメージしやすくなります。
「良さ」を、利用者が判断できる情報に変える
「親切です」「使いやすいです」という言葉だけでは、何が良いのか伝わりにくいことがあります。
そこで、抽象的な表現を具体化します。
- 丁寧な対応: 初回相談で現状と目的を整理し、対応範囲を確認する
- 更新しやすい: お知らせを管理画面から追加できる
- 初めてでも参加しやすい: 申し込み手順と当日の流れを事前に確認できる
掲載するのは、実際に提供できる内容に限ります。期待が大きくなりすぎる表現は、利用後の行き違いにつながるからです。
また、使いやすいボタンや見慣れたメニューがあるなら、その良さを残して改善する選択もできます。新しくすること自体より、利用者にとって何が良くなるかを基準に考えましょう。
まとめの一言:今ある強みを見つけ、利用者が具体的に想像できる情報として届けましょう。
4. 利用者の行動から、つまずく場所を見つける
作り手は、画面の仕組みをよく知っています。どのボタンを押すか、入力後に何が起こるかも分かっています。
だからこそ、初めて使う人の迷いを見落とすことがあります。
たとえば、イベント参加用のアプリで、曲と演奏パートを選ぶ画面を考えてみましょう。
作り手には分かる手順でも、利用者には「チェックしただけで申し込みが完了したのか」「確認画面へ進む必要があるのか」が伝わっていないかもしれません。
使い方について同じ質問が続いたら、説明文を増やす前に、操作の流れを確かめてみます。
操作を観察する、簡単な進め方
① 実際に近い目的を伝える
「このイベントで、希望する曲のギターパートに申し込んでください」など、やりたいことを伝えます。押すボタンの名前まで教えると、迷う場所が分かりにくくなります。
② 普段に近い環境で操作してもらう
スマートフォンでの利用が中心なら、スマートフォンで確認します。パソコンで見やすくても、小さな画面ではボタンが見つけにくい場合があります。
③ 手が止まった場所を記録する
押し間違いだけでなく、読み返した箇所や、完了したと思った時点も手がかりになります。困っている場合は必要なところで助け、試験のような雰囲気にしないことも大切です。
④ 利用者の理解を確かめる
操作後に、申し込みがどうなったと思うかを確かめます。画面上は処理が完了していても、本人に完了が伝わっていなければ、不安や重複操作につながることがあります。
見つかった課題を、画面の改善につなげる
次に進めないなら、ボタンの位置や文言を見直す。完了したか分からないなら、完了表示と確認方法を整える。入力エラーで戻れないなら、直す箇所を具体的に示す。
重要なのは、利用者に慣れてもらうことだけで解決しようとしないことです。
文字の読みやすさ、色だけに頼らない案内、キーボードでの操作なども、使いやすさを考えるうえで確認したい点です。必要な対応範囲は、利用者やサービスの条件に合わせて検討します。
少人数の観察ですべての課題を発見できるわけではありません。それでも、作り手だけでは気づかなかった迷いを知る機会になります。
まとめの一言:利用者が迷う場面を観察すると、説明や画面をどこから整えるべきかが具体的になります。
5. 小さく改善し、運用しながら育てていく
課題が見つかると、まとめて直したくなるものです。
ただ、多くの変更を同時に行うと、何が良かったのか、どこで問題が起きたのかを確認しにくくなります。影響や工数を踏まえて、小さく改善することも有効です。
たとえば、申し込みの完了が伝わっていないなら、まずは完了画面の案内を見直す。必要に応じて通知や履歴表示を検討する。困りごとに対して、順番を決めて進めます。
改善は、五つの項目で整理する
- 課題: 利用者が何に困っているか
- 仮説: どこに原因があると考えるか
- 変更: 今回、何を変えるか
- 確認: 何を見て判断するか
- 次の対応: 結果を受けてどうするか
たとえば、「申し込み完了の質問が多い」という課題に対して、「選択した内容と完了状態が画面で確認しづらい」という仮説を立てます。
そこで完了表示を整え、操作の確認と、その後の問い合わせ内容を見ます。質問が減っても、利用者数やイベントの条件が変わっていれば、今回の変更だけの効果とは言い切れません。数字と実際の声を合わせて考えることが大切です。
優先順位は、見た目の気になり方だけで決めない
申し込みできない、入力内容が失われる、誤った情報が表示される。こうした問題は、見た目の調整より先に対応する必要があります。
そのうえで、影響する人数、困りごとの大きさ、対応にかかる時間などを見ながら、着手する順番を決めます。
リニューアル直後にすべてが完成するとは限りません。公開後の反応から、必要な説明や運用の工夫が見つかることもあります。更新を続けられる体制まで考えておくと、改善を積み重ねやすくなります。
良い制作は、丁寧な観察と対話から
Webサイトやアプリの改善には、技術と同時に、目の前の状況を丁寧に見る姿勢が必要です。
利用者が迷う理由を決めつけずに確かめる。事業者が大切にしていることを聞く。今ある強みを見つけ、必要な変更につなげる。
その積み重ねが、サービスの魅力を伝え、日々の使いやすさを育てていきます。
制作やリニューアルを考え始めたら、まず「利用者に、どんな行動を取りやすくしてほしいか」を一つ書き出してみてください。相談する、予約する、参加する、情報を探す。その一つが、改善を考える出発点になります。
当サイトへのご相談でも、現在の困りごとや実現したいことからお聞かせください。まだ機能やページ構成が決まっていない段階でも、目的を整理するところから一緒に考えていきます。
まとめの一言:事実を確かめ、小さく改善し、使う人と運営する人の両方に合うサービスへ育てていきましょう。

